健康セミナー 令和2年分 | 蓮田病院

健康セミナー 令和2年分

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第299回:『「脳卒中」をどう考えるか』

 脳神経外科 篠原 千恵
(脳神経外科専門医)

 脳神経外科の外来を担当して皆様がよく口にされるのは、「私の親が脳卒中で亡くなったので心配になりまして」という一言です。
 脳卒中で亡くなる人は多く、癌・心臓病・肺炎に次ぐ身近な病気ですが、その他の病気との違いは、病気が落ち着いた後も後遺症により元の生活に戻れない事が多いことです。
 さて脳卒中の原因として一番大きなものは「加齢」で、これは避けようがありません。しかしかなりの確率で脳卒中を予防できるのも事実です。
 まず脳卒中は血管の病気ですから、血管の状態を健康に保ちましょう。具体的には、高血圧・高血糖・高脂血症をお持ちの方は厳重に治療・管理する必要があります。お薬に対する拒否感から病院に行くのを嫌がる人もいますが、早めに上手くお薬を使って、血管の状態を若いまま保った方が得策です。
 またもう一つの大きな原因に、心房細動という不整脈があります。この不整脈は心臓の中に大きな血栓を作りがちで、それが脳に飛んでいくと重篤な脳梗塞を引き起こします。これは血栓予防の薬で予防できます。
 残念ながら、脳卒中によって壊死を起こした脳細胞は二度と回復しません。脳卒中は起こってしまってからではもう遅いのです。せっかく予防できるチャンスを逃していませんか?

第298回:『運動と健康』

 内科 丸野 要
(日本外科学会指導医/専門医 日本消化器外科学会指導医/専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本乳癌学会認定医)

 運動とは日常生活での生活活動とスポーツからなる身体活動です。運動をすると膵臓からのインスリンの働きが改善され、血糖が筋肉に取り込まれることにより血糖値が正常化します。1日20分以上理想的には週に計150分以上の運動が勧められます。血糖値が上昇する食後30〜60分が望ましいです。有酸素運動(ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングなど)と筋力運動(筋力トレーニング)が有効です。また運動を習慣化することにより、代謝が活発となり血流が改善され体重が減少し高血圧が改善されます。有酸素運動を定期的に行うと、血中の中性脂肪がエネルギーとして消費され、悪玉コレステロールを分解し、コレステロール値を低下させます。血圧と血中脂質を改善するには、1日30分以上できれば毎日、最低でも週3回の運動が必要です。有酸素運動が効果的です。体を動かすと交感神経が活性化し、物事を前向きにとらえるようになり、β―エンドルフィン(麻薬の一種)が分泌され気持ちを高揚させ、幸せ感が増大します。またドーパミンが分泌され、ワクワク感が増し、セロトニンの作用で精神状態が安定し、ストレスの解消につながります。このように運動は精神的にも良い結果をおよぼします。厚生労働省では1日に男性は約8202歩、女性は約7282歩あるくことを推奨し、目標値として男性は約9200歩、女性は約8300歩をあげています。1000歩あるくことにより、30kcaℓを消費することになります。かくいう私も勤務時間の都合で毎日は運動できませんが、日曜日と祝日には約10㎞のランニングを続けています。

第297回:『期待されるAI(人工知能)支援による大腸内視鏡診断』

 総合診療科 濱田 節雄
(指導医:日本外科学会 日本消化器外科学会 日本消化器内視鏡学会 日本消化器病学会 日本大腸肛門病学会)

 大腸癌は近年増加傾向で国内癌の死亡数は第2位、罹患数は第1位です。早期大腸癌治療のポイントは内視鏡検査による早期発見と早期治療です。大腸内視鏡検査を受けていたにもかかわらず、後に大腸癌に至るケースが約6%あり、その原因として内視鏡検査の見逃しが58%と挙げられています。
 最近、AI(人工知能)支援による消化器内視鏡診断の研究・開発が行われています。AIに多くの早期大腸癌、腫瘍性ポリープの画像を取り込んで学習させると、AIはやがてそれらを判別できるようになり、「ここがどの位の確率で癌だ、前癌病変の腫瘍性ポリープだ、切除する必要のない非腫瘍性ポリープだ」と瞬時に示してくれます。
 大腸ポリープの内、腫瘍性か非腫瘍性かを見分けるのはベテラン内視鏡医師でも難しく、これまで腫瘍性か非腫瘍性かの正診率は70〜80%でした。前癌病変を見逃したり、必要のないポリープまで切除されていた訳です。しかしAIでは98%という高い精度が得られています。早期大腸癌や腫瘍性ポリープを内視鏡的に切除すると、大腸癌の罹患率を76〜90%抑制し死亡率を53〜68%減らせるとされています。
 最近ポリープ病変だけでなく、肉眼での認識が困難な平らな病変をAIによって指摘できるようにもなっています。今後、AIは大腸内視鏡検査の手助けとして大いに活用できるでしょう。

第296回:『突き指の話』

 整形外科 寺山 恭史
(東京女子医大整形外科学教室助教 日本整形外科学会認定整形外科専門医 日本手外科学会認定手外科専門医)

 「突き指」はスポーツをするお子さんだけでなく、職場や自宅など日常生活でよく起こる怪我です。「突き指」だからと病院に行かずに、自然に治ってしまった経験もあると思います。しかし、「突き指」には、関節の軟骨がいたんだり、骨どうしを固定する靭帯がいたんだり、指を動かす筋肉の動きを伝える腱の断裂や、小さな骨折を伴うこともあります。そういった場合でも、はれが少なく見た目だけでは判断が難しいことがあり、放っておくと後遺症が残ることがあります。
 多くは指先を伸ばす腱の断裂、またはその腱が付いている骨の骨折により、指を伸ばす力が伝わらずに指先が伸びなくなるという後遺症が残ります。そうすると、指先の曲げ・伸ばしのバランスが崩れ、曲げることしかできなくなるため、最終的には指先が強く曲がった状態になってしまいます。この指先が曲がった形が木槌に似ていることから、マレットフィンガーと呼ばれています。マレットフィンガーの治療は、指先を伸ばした状態で装具により固定する治療を行いますが、手術療法を検討する場合もあります。
 外来には怪我をして1ヶ月もたってから「突き指」の治りが悪いと来院する患者様がいらっしゃいます。しかし、当然早期に治療を開始した方が回復は良く、時間がたってしまうと、治療をしても後遺症が残ってしまうことがあります。
 突き指をしてしまって指の動きが悪い等、心配なことがありましたら、どうせ突き指だからとあなどらず、早めにお近くの整形外科にてご相談ください。

第295回:『ご飯を食べないで下さい』

 麻酔科 上田 朋範
(日本麻酔科学会麻酔科指導医/専門医 厚労省認定臨床研修指導医 日本医師会認定産業医 難病指定医)

 病院で検査や処置などを予約した時、禁食を指示された経験は何度かあると思います。この禁食とは「食べ物を口にすることがダメ」で、米を食べなければ良いと言う意味ではありません。「ご飯がダメだからパンを食べてきました」「おかずだけだから大丈夫でしょ」と実際に言われたこともありますが、食べ物は一切禁止です。 
 この禁食の指示は血液検査、内視鏡、造影CTなどの各種画像検査、手術等では安全性や正確性のためにお願いする事があります。検査・処置の内容によっては、検査結果が正確でなくなる、又は処置が難しくなり、最悪の場合、その処置が中止や延期になってしまう、或いは嘔吐等の合併症や偶発症の危険性が高くなるなどの理由からです。基本的には前日の夜9時以降は何も食べないように指示されることが多いのですが、水分摂取については食事と比べて少し条件が緩和される場合があります。日本麻酔科学会の術前禁飲食ガイドラインによると、清澄水(水、茶など)は2時間前までなら摂取可能とされています。ただし、ミルクなどの脂肪分が含まれている飲料、アミノ酸や食物繊維が含まれている飲料、カロリーが高い飲料は6時間以上空ける、固形物は8時間以上空けることが推奨されています。 
 処置や検査を予約した時には、その前の食事、水分などについて主治医にしっかりとご確認いただければ幸いです。もし、ご不明な点がありましたら電話でも良いので病院にお問合せください。

第294回:『感染症について』

外科 長谷川 久美
(日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会専門医/指導医 日本消化器病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 マンモグラフィ読影認定医)

  現在日本人の寿命は80歳ですが、ほんの5― 60年前までは4― 50代でした。死はずっと身近で、若い元気な人が急死するのが日常でした。
 若草物語では、3女のベスがしょう紅熱にかかり生死の境をさ迷う所は物語の一番のクライマックスですが、今ならすぐに治ります。
 第一次世界大戦の時には、戦死者そのものより、スペイン熱やブドウ球菌ジフテリアなどの感染症の犠牲者の方が多数でした。第二次世界大戦では、連合軍が抗生剤を開発し、感染症を征服できたことが勝利に貢献しました。つい一昔前まで感染したら神様に祈るしかなかった感染症の多くが、今ではたやすく治るようになりました。
 治療法の確立したエイズも、1980年代に突如として現れた当時は不気味で、死亡率も高かったです。C型肝炎の治療は、10年以上前と劇的に様変わりして今は完治するようになりました。
 新型コロナウイルスは、今までにない大敵です。治療法がなく人から人へうつる感染力が半端なく、破壊力も強い。人と人が自由に往来できなくなりました。グローバル化とは真逆の方向です。今まで信じてきた現在医学のなんと無力なことか!
 しかし今、世界中が全力で新しい治療法を探しています。情況はめまぐるしく変化しており、私達も注視しつつ、自粛して流行を抑え込みましょう。

第293回:『親知らずの萌出困難症が増えています親知らずは、早めに抜歯を』

歯科口腔外科 秋月 弘道
(日本口腔外科学会指導医 日本口腔外科学会専門医)

 親知らずは、通常16歳頃で歯冠部ができ、20歳ぐらいまでに萌出し、その後25歳頃までに歯根が完成します。近年、若年者の顎が小さくなる傾向があり、親知らずが正常に生えない萌出困難症が増えています。
 萌出困難症は周囲の歯肉の炎症、虫歯、口臭や歯列不正などの原因となり、抜歯されることが多くなっています。親知らずの抜歯は歯の発育とともに難しくなり、合併症の発生頻度が高くなります。とくに、重大な合併症である神経傷害は年齢とともに歯根が発育すると神経の管に近づくため発生の可能性が高まります。
 萌出困難症は15歳頃にはレントゲン検査で予測できます。トラブルを起こす可能性がある場合、20歳頃までに抜歯することにより、合併症を少なくすることができます。しかし、親知らずの抜歯は歯肉を切開し周囲の骨を削ったりして行うため、手術の痛みなどに対する恐怖心や上下左右の複数の歯を数回に分けて行う時間がとれないなどの理由から抜歯をためらう方もいます。
 近年当院では、そのような患者様を全身麻酔で抜歯することが増えています。全身麻酔では抜歯を無痛的に行えるとともに、仕事、授業や受験などで時間が取りにくい場合でも、2泊3日の入院で1度に複数の親知らずを抜歯できます。全身麻酔で抜歯をするには、術前に全身状態の検査を行い、手術中は全身状態を管理しながら行うため、抜歯時に起こる異常出血、嘔吐反射、誤嚥、血圧上昇などの偶発症に、より安全に対応できます。
 親知らずの抜歯は早めに口腔外科の専門医に相談されることをお勧めします。

第292回:『がん予防への自己意識』

外科 兼子 順
(東京医科歯科大学医学部臨床教授 日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会認定医 日本消化器内視鏡学会専門医 厚労省認定臨床研修指導医)

 最近の統計によると、本邦の約2人に1人が、がんに罹患するそうです。がんは早期発見・早期治療を行うと治癒が期待出来る疾患です。遺伝性のがんを除外すると、がんの発生に大きく関与しているのが慢性の刺激(炎症)です。例えば、咽喉頭がん、肺がんに大きく関与するのが喫煙による慢性炎症、肝がんは肝炎ウイルスやアルコール過剰摂取による肝炎、胃がんはヘリコバクターピロリ菌感染による慢性萎縮性胃炎が挙げられます。がんに罹患しない様に生活習慣を改善したり、既存良性疾患に対し治療を行う事により発がんのリスクを減らす事が可能な疾患もあります。
 「個人による生活習慣の改善により発がんのリスクを減らす方法」としては、咽喉頭がん、肺がん等に対する禁煙。肝がんに対する過剰なアルコール摂取を控える事などが挙げられます。
 「既存良性疾患に対する積極的な治療により発がんのリスクを減らす方法」として、肝がん発生の原因とされているウイルス性肝炎に関しては、肝炎ウイルスに効果的な治療薬が開発されたため、ウイルス性肝炎から肝硬変、肝がん発症のリスクが低下しました。
 胃がんは国家的指導による減塩政策、冷蔵庫の普及とヘリコバクターピロリ菌感染症に対する投薬による除菌療法により胃がん罹患数は低下傾向にあります。
 つまり、がん対策は炎症を起こさないようにする既存良性疾に対する前向きな治療と、自己管理や生活習慣の改善などの自己意識が未来の自分のために重要です。

第291回:『自分の足は自分の目で』

総合診療科 山形 健一
(日本外科学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器外科学会認定医 日本癌学会会員)

 今や国民病と言われている糖尿病。わが国では40歳以上の4人に1人が糖尿病です。そして年間3000人以上の患者さんが、糖尿病性壊疽によって足の切断を余儀なくされています。
 糖尿病の本体は患者さん自身のインスリンが足りない、もしくは効かないことによる高血糖の持続です。高血糖が持続すると血管の内側から活性酸素が大量に発生し、血管壁を破壊します。このようにして常にダメージを受けている足は、ちょっとした傷や水虫により感染や壊疽が起こりやすいのです。
 また糖尿病の方は足の感覚がにぶくなっていて、初期段階では痛みやかゆみを感じないことも多いのです。
 まずはご自分の足をよく観察しましょう。傷や水ぶくれはありませんか?
 赤いところ、黒いところはありませんか?
 足の水虫や爪の水虫はありませんか?
 気になる方はすぐ主治医に相談しましょう。
 また爪は切りすぎないように。適度な長さを保ち、爪の角は切り落とさないようにしましょう。
 冬場は湯たんぽ、こたつ、ストーブなどでのやけど・低温やけどに気を付けてください。白い靴下は足の保護に役立ち、出血した場合気が付きやすいですよ。足に合った靴をはくことも大切です。
 そしてなにより足はきれいに洗って清潔を保ちましょう。足のトラブルを避けるためには予防と早期発見が重要です。
 自分の足は毎日観察して生涯現役!

第290回:『抗癌剤感受性試験』

理事長 前島 顕太郎
(日本医科大学非常勤講師 日本消化器外科学会指導医/専門医 日本消化器内視鏡学会指導医/専門医 日本消化器病学会指導医/専門医 日本消化管学会胃腸科指導医/専門医/認定医 日本外科学会専門医 日本大腸肛門病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 消化器がん外科治療認定医 日本食道学会食道科認定医 厚生労働省認定臨床研修医指導医)

 新年あけましておめでとうございます。皆様お健やかに新春をお迎えのことと存じます。
 現代では抗癌剤の開発は進み、種類も多くなり、よく効くようになってまいりました。しかしながら癌の種類によっては効果の出にくい疾患もあります。
 一方で抗癌剤感受性試験というものが研究されております。抗癌剤治療の前に、治療を受けられる患者様の癌に効く抗癌剤の種類を判別するという検査で30年ほど前から高度先進医療として行われました。高度先進医療は、確立はされていないが有望な治療法・検査法を提供するため、その先端的な技術部分だけは患者様の実費負担で行われるものです。
 その後、大学病院などで研究が進められ、有用性が報告され2008年には保険適応となりました。しかしながら問題がありました。保険で認められた検査代金は、実際に抗癌剤感受性試験検査にかかる費用の約3分の1しか出なかったのです。このため実際に保険を使って行われることはあまりなく、さらにはこの検査を行っていた検査会社も検査受託を中止してしまいました。
 現在ではごく一部の大学病院で研究が続けられているのみです。私は研究がうまく進み、実臨床で活用されることを願っております。

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