健康セミナー 令和3年分 | 蓮田病院

健康セミナー 令和3年分

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第311回:『「食べること」をどう考えるか』

 脳神経外科 篠原千恵
(脳神経外科専門医)

 日本の地方都市はどこもそうですが、蓮田市あるいはその周辺地域は高齢化がすすみ、食事をとることが難しくなっている方がどんどん増えています。食事は生きていくための栄養素を取り入れる基本的で大事な行為なのですが、一方で、明らかに嚥下障害があるのに無理をして食事をし、誤嚥による肺炎になったり、窒息で命を落としたりという人が後をたちません。「食べること」、言い換えると「摂食」と「嚥下」は、毎日何回も行われる大切な活動です。これをいかに楽しく、かつ安全に続けていくかは、健康長寿の基本です。2020年の初め、まだコロナウイルスが猛威を振るう直前に、蓮田病院に摂食嚥下を支援するチームを作ろうという話が持ち上がりました。摂食嚥下チームは、「食べること」を科学的に評価し、障害されている場合には適切な支援を行います。支援は摂食嚥下の訓練をすすめたり、嚥下の難しい方には胃瘻や経鼻胃管という管を使った人工の栄養を行いながら楽しみとしての食事を続けたりすることが含まれます。チームは医師・歯科医師・言語聴覚士・薬剤師・栄養士・看護師・放射線技師・歯科衛生士等、嚥下および口腔衛生にかかわる各職種からなり、嚥下障害で悩んでいる患者さんを各方面からサポートすると共に、定期的にカンファレンスを行ってチームのレベルアップを目指しています。また摂食嚥下チームの窓口として、2021年7月より摂食嚥下外来が始まりました。チームのメンバー紹介と活動の内容は、「つばめ通信(蓮田病院版)」として月1回発行しており、病院のホームページからご覧頂けます。今後とも私たちをよろしくお願い致します。

第310回:『糖尿病のおはなし』

 内科 丸野要
(日本外科学会指導医/専門医 日本消化器外科学会指導医/専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本乳癌学会認定医)

 糖尿病とは血糖値を下げる作用のあるホルモンであるインスリンの作用不足による慢性の高血糖状態のことです。糖尿病にはインスリンを作る膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が破壊されることにより、インスリンが分泌されなくなることが原因で高血糖が起こる若年者に多い1型糖尿病と、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を示す因子が原因で高血糖を起こす成人に発症の多い2型糖尿病があります。症状としては口渇・多飲・多尿・体重減少・体力低下・空腹感・だるさ・眠気が現れます。HbA1cという検査値の上昇、空腹時血糖の上昇、さらに上記の臨床症状がそろうと糖尿病と診断されます。糖尿病の主な合併症には目の血管が障害されることによって失明にまでいたる糖尿病性網膜症、腎臓の血管が障害され腎機能が低下してついには腎不全となり腎透析が必要となる糖尿病性腎症、末梢の知覚・運動・自律神経への血管が障害され、手足のしびれ、感覚低下、筋力低下、ほてり、食欲低下、勃起障害などがおこり、足の先の壊死にまでいたる末梢神経障害があります。薬物治療に関してはインスリン抵抗性を改善する薬、インスリン分泌を促進する薬、糖分の排泄を促進または吸収を阻害する薬、肝臓での糖産生を抑制し末梢組織でのインスリン感受性を改善する薬、末梢組織での糖の利用を高める薬があります。これらの大部分は経口薬です。これらの薬剤を組み合わせて治療することになります。しかし糖尿病が悪化してこれらの薬ではコントロールできなくなると、インスリンの皮下注射が必要となります。インスリンには効果が出現するまでの時間により、即効型、持続型、即効型と持続型を混合した中間型があります。これらのインスリンを組み合わせて投与します。糖尿病は定期的に健康診断を受けて、早期に治療を開始することが大切です。

第309回:『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断と除菌』

 総合診療科 濱田節雄
(指導医:日本外科学会 日本消化器外科学会 日本消化器内視鏡学会 日本消化器病学会 日本大腸肛門病学会 認定医:日本ヘリコバクター学会H.pylori(ピロリ菌)感染症)

 ヘリコバクター・ピロリ菌が胃粘膜に感染すると「ピロリ感染胃炎」を引き起こします。ピロリ菌は除菌されない限り、生涯に渡って感染を続け、加齢と共に進行すると胃粘膜は薄くなり、「萎縮性胃炎」と呼ばれる慢性胃炎の状態になります。萎縮性胃炎の状態となると、胃がんが発生し易くなると考えられています。
 胃カメラで胃にピロリ菌感染を疑い、ヘリコバクター感染診断検査でヘリコバクター・ピロリ菌感染があると証明されれば、「ピロリ感染胃炎」と診断され、除菌治療ができます。除菌治療前の胃カメラは、胃がん等の治療が必要な疾患を否定するためにも不可欠です。
 胃がん予防のためには、胃内にピロリ菌による変化が広まっていない早い時期にピロリ菌感染の有無を調べて、除菌を行う早期発見・早期治療が望ましいと考えられています。
 ピロリ菌を除菌すると、萎縮性胃炎が改善する傾向になり、胃がんの発症が抑制されます。しかし、ピロリ菌除菌前の胃炎状態が進んでいる程、除菌後も胃がんのリスクはより高く残ります。ピロリ菌がいなくなった時点で、すでに検査で発見できない極めて小さな潜在的ながんができてしまっている事等がその原因と考えられています。そのため除菌が成功しても定期的な胃カメラ検査が必要です。

第308回:『指の変形の話』

 整形外科 寺山 恭史
(日本手外科学会認定手外科専門医 日本整形外科学会認定整形外科専門医 日本整形外科学会認定リハビリテーション専門医 日本整形外科学会認定リウマチ医)

 前回のコラム(昨年7月号)では突き指により指が曲がってしまう怪我の話をしました。しかし、怪我もないのに徐々に指の先が膨らんで曲がってくるという病気があります。それは、ヘバーデン結節と言われる変形です。中高年の方に多く、指先の関節、爪の根元あたりが硬く膨らんできて、完全に伸ばすことが難しくなってきます。クッションである軟骨がすり減ってしまい、それに伴って関節周囲の骨が膨らんでくる変形が起こる、変形性関節症の一種です。初期にはレントゲン変化がない事もありますが、ちょっとした負担で痛みを繰り返します。変形は徐々に進行し、最終的には指先が少し曲がった状態で関節が固まります。固まっていても痛みが出なくなるので使い勝手はそれほど悪くないですが、そこに至るまでには長い時間がかかります。関節リウマチを心配される方もいますが、関節リウマチでは指先の関節症は起きないという特徴があります。膝の変形性関節症では、人工関節手術が行われることも多いですが、指先の関節には人工関節はなく、劇的に症状を改善させるよい治療法がありません。骨と関節の病気なのでマッサージはほとんど意味がありません。指を使わないようにしていれば、痛みは自然に落ち着いてきますが、テーピング等による固定により関節へかかる負担を軽減し、炎症を軽減させる塗り薬を処方する事もあります。強い痛みを繰り返す方や、特に指の左右の変形やぐらつきがある方には、指先の関節を固定する手術を検討する場合もあります。

第307回:『お薬手帳』

 麻酔科 上田 朋範
(日本麻酔科学会麻酔科指導医/専門医 厚労省認定臨床研修指導医 日本医師会認定産業医 難病指定医)

 病院にかかる時、皆さんは何を持っていきますか?
 保険証、診察券のほかに必ず忘れてはならないのはお薬手帳です。たくさん薬を飲んでいるのに、何を飲んでいるのかご本人もあやふやで分からない、という例はよくあります。自覚症状のない持病を全て暗記し、自分で説明できる人は実はあまり多くありません。
 普段飲んでいる薬と重複しないか、飲み合わせに問題が無いかが分からないと処方できない薬もありますが、お薬手帳を見ると、こうした情報が一目で分かります。
 また、その患者さんが普段どういう病気で通院しているかがかなり正確に分かります。
 さらに、薬の種類や用量を見れば「その病気がどの程度悪いか」も分かります。たとえば同じ高血圧の薬でも、1種類を1錠飲んでいる方、同じものを2錠飲んでいる方、3種類以上の薬を併用して飲んでいる方では、重症度やタイプはまったく違います。例え自分では説明できなくてもお薬手帳さえあれば医師はこのように多くの情報を得ることができるのです。
 まだ持っていない方は必ず早めに作る事をお勧めします。最近ではかわいらしいキャラクターや絵画、動物などが表紙を飾る手帳も種類が豊富で、ついつい目移りしてしまいます。
 もし、病院に行く間際になってお薬手帳が無いことに気づいた時は、飲んでいる薬をそのまま持参してください。手帳ほどではありませんが、ある程度分かることもあります。

第306回:『消化管出血について』

 外科 長谷川 久美
(日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会専門医/指導医 日本消化器病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 マンモグラフィ読影認定医)

 「消化管」は、口から始まり、食道、胃、十二指腸、5メートルと長い小腸、1メートルの大腸と、長ーい一本道です。「消化管出血」は中高年以上に見られることが多く、原因は、上部の胃十二指腸潰瘍や、下部の大腸では部分的な凹みである憩室が多いです。もちろん癌が原因なこともあります。小腸は少ないです。
 皮下の出血なら、周りの脂肪や組織で圧迫止血され、青アザになるくらいですが、消化管出血では、周りに止血してくれる組織がなく出続けます。まるで水道の蛇口が開いたままというイメージです。その結果、簡単に体中の半分くらいの血液が失われることもあり、早い止血と原因究明が必要となります。
 胃などの上部出血では、赤い血を吐いたり長い腸を通るので黒い便となり、一方大腸では新鮮な赤い便となるので、症状でだいたい見当はつきます。
 ところが先日、「赤い便が出たから大腸検査をお願いします」と近医からご紹介頂いた70代男性に、来院時に念の為行った胃カメラで、大きな出血性潰瘍が見つかり止血しました。一方別の80代男性では、「胃潰瘍の既往あり、黒色便」との前情報でしたが、胃カメラは問題なく、反対に大腸憩室出血で止血しました。いずれも初診時の印象と正反対でした。
 消化管出血治療の基本は、禁食による消化管の安静と、迅速な胃大腸検査です。もし、下血等があれば、すぐに来院して下さい。そして入院は覚悟して下さいね。蓮田病院では迅速な対応を目指します。

第305回:『急に食事を取らなくなった!顎関節脱臼(がくかんせつだっきゅう)かも』

 歯科口腔外科 秋月 弘道
(日本口腔外科学会指導医 日本口腔外科学会専門医)

 あくびをしたり、歯科治療や胃の内視鏡検査の時に大きく口を開けると、あごの関節の正常な動きの範囲を越えて、関節が外れて口が閉じられなくなることがあります。これが顎関節脱臼です。
 顎関節脱臼には突然に起こるものや、ちょっとしたことで繰り返し関節が外れてしまう(習慣性脱臼)、また、関節が外れた状態で長い間、放置されると陳旧性顎関節脱臼となることもあります。顎関節脱臼の症状は顔が面長となり、口が閉じれなくなる、上手く話せない、上下のかみ合わせが悪くなるなど診断は難しくありません。
 しかし、認知症などで自分の症状が訴えられない場合や、とくに歯がない無歯顎の方は咬み合わせの異常の確認が難しく顎関節の脱臼に気がつかれないこともしばしばあります。急に食事を取らなくなった、噛めなくなった、飲み込めなくなった、義歯があわなくなったなどの症状は、しばしば顎関節脱臼が原因になっていることがあります。食べ物を噛むために顎を動かす機能(咀嚼機能)が障害されると、日常生活の質(ADL)の低下や認知症が進みやすくなるといわれています。
 突発性の顎関節脱臼は通常、徒手整復により治療できますが、習慣性脱臼や陳旧性顎関節脱臼では整復しても繰り返し脱臼したり、徒手整復できないことがあります。このような場合は外科的な手術によって治療することができます。最近では手術も比較的体に侵襲の少ない手術法で行われるようになっています。
 前記のような症状が見られた場合、かかりつけの歯科医や口腔外科に相談されると良いと思います。

第304回:『コロナ禍における検診の重要性』

 外科 兼子 順
(東京医科歯科大学医学部臨床教授 日本外科学会専門医/指導医 日本消化器内視鏡学会専門医/指導医 厚労省認定臨床研修指導医)

 がんを治療・克服するためには、早期発見・早期治療が重要になります。そのためには、定期的にがん検診を受ける必要があります。「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、がん検診の受診者は激減しています。一般的に、がんは早期発見ほど治りやすく、発見が遅れるほど、治療が困難になります。コロナは防いだけれど、がんが進行していたとなっては本末転倒です」と日本対がん協会から発出されています。
 厚生労働省は、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんに対し、定期的にがん検診を受けることを推奨しています。これらのがんは、がん検診を行うことで集団の死亡率を下げる効果があることが科学的に証明されています。
 新型コロナウイルス感染症に対する感染防止対策を徹底するため、日本対がん協会、日本総合健診医学会など健診に関連する8団体は合同で、「健診実施機関における健診実施時の新型コロナウイルス感染症対策」をまとめました。
 当院検診センターも、コロナ対策として受診者の密集を避けるため、1日の予約者数、予約時間等を調整し、検診受付後は速やかに問診、体温測定を行い、受診者の健康状態を確認しています。受診者間や受診者と職員の間の距離を確保するとともに、検診に要する時間も可能な限り短縮の方向で取り組んでいます。
 新型コロナウイルス感染症を漠然と怖がるよりは、正しい知識を持って対策し、ご自身の健康状態を検診によってチェックして健康を維持することが重要とされています。

第303回:『耳鳴りはなぜ起こるの?』

 総合診療科 山形 健一

 気にすれば気にするほどしつこく鳴り続ける耳鳴りは本当につらいものです。わが国では300万人以上の患者さんが耳鳴りの苦痛に悩まされています。外耳道に生ずる耳垢や外耳炎、中耳が障害される中耳炎、内耳が障害される加齢性難聴・メニエール病・突発性難聴などにより耳鳴りが発生します。炎症が原因の耳鳴りは治療によって落ち着きますが、内耳が原因の耳鳴りは難治性のことが多いのです。難聴と耳鳴りは密接に関係しています。
 音を聞くために重要な内耳の蝸牛が障害される加齢性難聴や突発性難聴では、蝸牛から脳へ伝わる音の情報量が減ってしまいます。すると脳に過剰な興奮が生じ、耳鳴りとなって現れると考えられています。
 耳鳴り自体は異常なものではなく、誰にでも生じます。そして多くの方は耳鳴りに慣れ、ふとした時に感じる程度に落ち着きますが、その一方で耳鳴りを極端に気にしてしまい、いつも耳鳴りがしているか確認してしまう方もいます。
 そのメカニズムには、不安などの苦痛を感じる脳の部位が関係しているといわれています。耳鳴りに対する怒りの感情が自律神経系を興奮させ、脳は耳鳴りをより大きく感じてしまいます。難聴が原因の耳鳴りに対しては補聴器を装用して音をきちんと脳に届けることで、脳の過剰興奮を抑え、耳鳴りを軽減することができます。耳鳴りに対する不安や怒りの感情から、耳鳴りに対する過剰反応が生じている場合は、この反応をさらに刺激すると考えられている仕事・人間関係などの日常ストレスを改善することが大切です。
 耳鳴りは不眠や不安など生活の質を低下させます。耳鳴りを感じたら、不安や怒りを覚える前に耳鼻科専門医にご相談ください。

第302回:『新型コロナウイルス』

 理事長 前島 顕太郎
(日本医科大学非常勤講師 日本外科学会指導医/専門医 日本消化器外科学会指導医/専門医 日本消化器内視鏡学会指導医/専門医 日本消化器病学会指導医/専門医 日本消化管学会胃腸科指導医/専門医/認定医 日本大腸肛門病学会指導医/専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 消化器がん外科治療認定医 日本食道学会食道科認定医 厚生労働省認定臨床研修医指導医)

 新年あけましておめでとうございます。皆様お健やかに新春をお迎えのことと存じます。
 現在も続いていることと思われますが、昨年といえば「新型コロナウイルス」です。コロナは全世界で広がりを見せ、疾患としての健康被害だけではなく、人々の生活を制限することとなり、経済的被害も甚大であります。
 昨年を見る限り、夏のような高温多湿では流行らないのではないかという淡い期待も外れました。このため今年の冬のインフルエンザ流行期には、発熱患者様が感染症なのか、それ以外なのか、感染症であれば、コロナなのかインフルエンザなのか、またはその他の感染症なのかを見極めることが重要となります。
 今のところコロナの感染力は強いと思われるため、見誤るとたちまち感染が広がることが危惧されます。全世界各地で治療薬、ワクチンの開発が進められていますが、実際安心して安全にかつ有効に使用できるまでは時間がかかると思います。
 それまでは、感染症対策の基本を続けることが肝要です。今一度、確認し行いましょう。
 感染症防止の3つの基本は、①身体的距離の確保(ソーシャルディスタンス)②マスクの着用③手洗い・手指消毒です。

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