外科 長谷川 久美 (日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会専門医/指導医 日本消化器病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 マンモグラフィ読影認定医)
ピロリ菌は、胃の粘膜に酸性の環境に適応して生息する特殊な菌で、1983年に発見されました。ピロリ菌のいるお母さんが口移しで与えた食べ物から、唾液を介して免疫が未熟な赤ちゃんに感染します。一方、大人には感染しません。 ピロリ菌がいても症状はありませんが、ピロリ菌は自分の周りにアンモニアの毒素を出して慢性胃炎を起こします。鳥肌胃炎といって粘膜は赤く腫れ、高齢者になると粘膜の萎縮が進み、すり切れたカーペットのように白っぽくなります。 ピロリ菌感染の胃では、潰瘍や胃癌になりやすく、特に胃癌は、放置すると80代までに約20人に1人が発生します。
ピロリ菌退治の方法は、一週間、抗生剤と胃酸を抑える薬を飲むだけです。8割方いなくなります。除菌できた胃は全く元通りとはいかないものの、つやつやと光沢が出てきます。 ここで重要なのは、たとえ除菌できても、既感染の胃粘膜ではくすぶった胃炎の背景から新しく胃癌が発生したり、除菌前から既に小さな胃癌が発生していたりして、除菌後も30%ぐらいは胃癌の発生リスクはあるということです。更に最近、除菌後の胃癌は、ポリープ型でなく、癌の表面がのっぺりと平坦で、更に粘膜下に浸潤して発見時にはより進行しているということがわかってきています。 ですから、除菌できた方は安心せず、一年に一度の上部内視鏡検査(胃カメラ)を受けて下さい。バリウム検査では、ピロリ菌退治のあと胃粘膜がかえってきれいに修復された後で、平坦型の胃癌が描出されず、適しません。