外科 兼子 順
日本における大腸がんの罹患数は悪性腫瘍のうち第1位(2019年)、大腸がんによる死亡者数は第2位(2022年)と増加傾向にあり、大腸がんの予防を行うことが喫緊の課題となっています。胃がんの原因の殆どがヘリコバクターピロリ菌と判明し、血液や便などで簡単にピロリ菌感染の有無を判定し、一週間の内服除菌治療により胃がん発症の予防効果があります。
大腸がんについては、最近の研究で歯周病との関連が注目されています。口腔内には約700種以上の細菌が存在すると言われています。口の中が健康的で良い状態であれば、細菌叢そうに乱れがなく細菌叢が良い状態と言えます。歯周病になると歯茎に慢性炎症が起こり、細菌叢が乱れます。大腸がん患者の唾液および大腸がんを調べたところ、四割以上の患者で歯周病菌と言われる嫌気性菌のフソバクテリウム・ヌクレアタムが検出されたと報告されています。歯周病に罹ると口腔内にフソバクテリウムが増えて細菌叢に乱れが起こり不良な状態になります。細菌は呑み込みや血流に乗って大腸へと運ばれるのではないかと推測されています。大腸がん患者にフソバクテリウムが検出されることが多く、がんが進行するにつれてフソバクテリウムの菌量が多くなり、菌量が多いほど生命予後が悪いとの報告もあります。
歯周病治療を適切に行えば、大腸がんの発生予防や進行抑制ができる可能性があります。自身で大腸がんを予防できる事として、細菌の餌となる歯垢をためないこと、つまり食後や寝る前の歯磨きが重要だと思います。