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健康セミナー
2024年分

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第344回:『脂肪肝について』

内科 村木 輝

 脂肪肝とは肝臓に脂肪が過剰に蓄積された状態をいいます。もともと肝臓では脂肪が作られていますが、作られた脂肪は肝細胞の中に貯められ、エネルギーとして消費されています。しかし、消費されるエネルギーよりも作られた脂肪が多くなると、過度に脂肪が蓄積されていってしまいます。生活習慣病、メタボリックシンドロームと合併しやすいほか、過度な脂肪が起こす長期にわたる慢性炎症により肝硬変や肝細胞癌の発生の原因となり得ます。日本人の脂肪肝患者数は2千万人以上と言われており、最も頻度の高い肝疾患となっています。しかしながら、脂肪肝は生活習慣を改善することで治る可能性がある疾患です。そこで今回は、脂肪肝を改善するための食事と運動のポイントを挙げてみます。

1.適度な食事量を心がける
2.食事は野菜から食べ始める
3.主食(ご飯、麺類など)の摂取は控えめに
4.お酒は禁酒または節酒を心がける
5.緑茶を飲む(カテキンの抗活性酸素作用)
6.週3〜4日、1日30分程度のウォーキング、またはそれに相当する量の運動をする
7.筋トレをする
 これらのポイントは生活習慣病の改善・予防にも役立つと考えられます。脂肪肝に限らず、肝臓病は自覚症状に乏しく発見が遅れてしまうことがあります。健康診断で肝機能異常を指摘された場合は放置せず、早めに医療機関を受診し医師の診察・アドバイスを受けるようにしましょう。

第343回:『病院の選び方~手術が必要な場合②~』

麻酔科 上田 朋範

 2023年6月の記事では入院・手術が必要となった時の病院選びの基準について、自宅からの交通アクセスが重要である点をお伝えしました。
 とはいえ、手術となる病気は様々で、骨折、扁桃炎、がんなど様々な場合があり、それぞれの場合でもどこの病院を選択するかは非常に重要なポイントとなります。今回はご自身の病気ががんであると判明した場合、あくまでも一般論としてですが、どのように病院を選ぶかの選択肢を三つ提案いたします。
 まずは近隣のクリニックの医師に相談する事です。初診では近くの医療機関を受診するメリットが大きいのは当然ですが、クリニックの医師は日々必要に応じて患者さんを様々な病院に紹介しています。同じ地域の病院のそれぞれの強みを知っているので、患者さんが自力で調べるよりもはるかに確実性の高い情報が得られます。
 次に自宅からアクセスの良い病院を選択肢に入れる事です。術前の検査だけではなく術後の定期通院と診察、治療が必要となります。最近は化学療法(抗がん剤治療)も外来通院で行うのが一般的で1〜2週間に1回ほど病院に通う必要も出てきます。自宅から遠いと往復だけで体力が奪われ予定通りの治療を続ける事が難しくなります。
 最後にがん治療を専門的に行っている症例豊富な病院を選択肢に入れる事です。ただし、大きな病院ほど勤務する医師が数年ごとに入れ替わる事が多いので過去の症例が多いからと言って将来もその豊富な症例数が維持されるとは限らないのが難点です。
 いずれの場合でも、病院の選択は非常に困難です。迷った時はかかりつけの病院で相談する事を強くお勧めします。

第342回:『腹膜炎について』

外科 長谷川 久美

 今回は腹膜炎について説明します。腹膜は、胃・腸・肝臓などお腹の臓器の表面を覆う膜のことで、通常は無菌状態です。お腹の臓器の炎症が腹膜に及ぶと腹膜炎になります。腹膜炎の原因は、胃十二指腸潰瘍穿孔や、腸閉塞、虫垂炎、胆のう炎などがあります。
十二指腸潰瘍穿孔では、十二指腸に穴が開いて腸内容液が腹膜側に漏れ出ます。腸内容液の腸内細菌が腹膜全体に及ぶと、炎症が腹部全体に広がる汎発性腹膜炎になります。その状態が続くと、細菌の毒素が腹膜から血流を通って体全体をめぐり、細菌性ショックといって、肝臓腎臓の機能にダメージを与えて多臓器不全となります。
 腸閉塞で、腸が単につまっただけでは腹膜炎になりませんが、ねじれ具合などで腸の血流が悪くなると、腸が腐って(壊死)炎症が腹膜に及び、やはり腹膜炎となります。腹膜炎を来した腸閉塞では、腸が腐っていると判断され、緊急手術が行われます。
 このように腹膜炎は、すばやく外科治療(手術)を検討しなくてはならない緊急事態といえます。時に致命的になることもありますが、最近の腹部CT検査では、かなり迅速に正確に腹膜炎を診断することができ、適切な手術によって救命できる場合がほとんどです。急にひどくお腹が痛くなったら、腹膜炎のこともありますから、すぐ病院へ来てくださいね。

第341回:『口腔ケア、がん転移抑制の鍵に』

歯科口腔外科 秋月 弘道

 むし歯の原因菌であるミュータンス菌(Streptococcus mutans)は、むし歯の多い人や口腔内の衛生状態の悪い人の口腔内に多く存在します。
 このミュータンス菌は口腔内の傷や歯周病の炎症組織から血液に中に入り込むといわれています。血管の中に入り込んだミュータンス菌は血管の内側の細胞に炎症を起こし、がんの転移を促進することが以前から報告されていました。
 さらに最近、このミュータンス菌が血管内での血栓(血液の塊)形成やがんの転移に影響を及ぼすことについて新しい研究結果が発表されました。この研究では、ミュータンス菌の刺激により、血管の内側の細胞で血液を固まらせるときに働く血小板の活性化や血小板の凝集する働きが亢進されることが観察されました。また、血管の内側への好中球の集まりも促進させることが示されました。さらにがん血行性転移を調べる動物実験では、ミュータンス菌を注射した肺組織では、通常の肺組織に比べ腫瘍細胞の数が多いことが明らかになりました。
 これらの結果、口腔内のミュータンス菌が血管の中に入ると血栓形成を促進し、がん細胞の血管への接着の増加しがんが転移しやすくなることを示しており、「がん患者の口腔衛生状態を良好に保つことは、がん関連血栓症やがん転移抑制に重要であることが示唆された」と述べています。
 がんの患者さんに限らず、日頃から、むし歯をきちんと治療して、適切な口腔ケアを行い口腔内のミュータンス菌を少なくしておくことが大切です。

第340回:『大腸がんと歯周病』

外科 兼子 順

 日本における大腸がんの罹患数は悪性腫瘍のうち第1位(2019年)、大腸がんによる死亡者数は第2位(2022年)と増加傾向にあり、大腸がんの予防を行うことが喫緊の課題となっています。胃がんの原因の殆どがヘリコバクターピロリ菌と判明し、血液や便などで簡単にピロリ菌感染の有無を判定し、一週間の内服除菌治療により胃がん発症の予防効果があります。
 大腸がんについては、最近の研究で歯周病との関連が注目されています。口腔内には約700種以上の細菌が存在すると言われています。口の中が健康的で良い状態であれば、細菌叢そうに乱れがなく細菌叢が良い状態と言えます。歯周病になると歯茎に慢性炎症が起こり、細菌叢が乱れます。大腸がん患者の唾液および大腸がんを調べたところ、四割以上の患者で歯周病菌と言われる嫌気性菌のフソバクテリウム・ヌクレアタムが検出されたと報告されています。歯周病に罹ると口腔内にフソバクテリウムが増えて細菌叢に乱れが起こり不良な状態になります。細菌は呑み込みや血流に乗って大腸へと運ばれるのではないかと推測されています。大腸がん患者にフソバクテリウムが検出されることが多く、がんが進行するにつれてフソバクテリウムの菌量が多くなり、菌量が多いほど生命予後が悪いとの報告もあります。
 歯周病治療を適切に行えば、大腸がんの発生予防や進行抑制ができる可能性があります。自身で大腸がんを予防できる事として、細菌の餌となる歯垢をためないこと、つまり食後や寝る前の歯磨きが重要だと思います。

第339回:『がんゲノム治療』

総合診療科 山形 健一

 以前、私がこのセミナーで取り上げたことのある女優アンジェリーナ・ジョリーさんの遺伝性乳がんについて、まだご記憶の方もいらっしゃるでしょうか。

 遺伝性乳がん卵巣がんや、大腸がん子宮体がんが家系内に多く発生するリンチ症候群と呼ばれるものがあります。リンチ症候群は、比較的若い年齢で大腸がんや子宮体がんを発症し、胃、胆のう、すい臓、小腸、脳などの腫瘍が本人や家族に重複して発症する特徴があります。

 リンチ症候群の検査にはまずMSI検査があります。これは手術や内視鏡検査の際に切除したがん組織を使い、MSI検査で陽性であった場合、リンチ症候群確定診断のための遺伝子検査を行います。

 近年のがん治療では多数の遺伝子変化を同時に調べて遺伝子の異常を明らかにし、一人一人の体質やがんの特徴に合わせて治療法を選択する『がんゲノム治療』が積極的に行われています。

 ゲノムとはDNAの文字列に表された遺伝情報のことで、ヒトゲノム約30億個の中に約2万3000個の遺伝子が含まれています。この遺伝子に異常が起こると様々な病気の原因となるのです。

 もちろん一般のがんのほとんどが親から遺伝しているわけではなく、遺伝に関係のないがんも数多く存在しています。ただ遺伝性腫瘍の患者さんに対し、最近では非常に効果のある分子標的薬が開発されてきています。

 詳しい情報をお知りになりたい方は主治医の先生にご確認ください。アンジーるより生むがやすし。

第338回:『笑う門には福来る』

理事長 山﨑 彩野

 新年あけましておめでとうございます。
 皆様お健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 2020年より苦戦してきたコロナも昨年より5類へと移行し、久しぶりの賑やかなお正月になった事と存じます。マスク生活が定着し口を隠す生活が長く続いた事で、口を動かす頻度が減ってしまったのではないでしょうか。口には様々な役割があり、「呼吸をする」「食事をする」「会話をする」「表情をつくる」など、どれも生きていく上で重要です。
 楽しいお正月には「食事をする」機会も多いかと思います。食事の際、口は複雑な動きが連動しています。食べ物を認識する、咀嚼する、飲み込みやすい形にする、舌により送り込む、この一連の流れを促す際に、力を発揮してくれるのが、口腔周囲筋と舌と唾液になります。
 口の中には無数の唾液腺があり、口の中を刺激すると、唾液がたくさん出てきます。唾液で口が潤うと、味覚も感じやすくなり、口の中の汚れも溜まりにくくなります。食べ物の消化にも役立ちます。
 では、どうやって刺激をするのがよいでしょうか。口腔周囲のマッサージや舌の運動はとても効果的です。日常的に行うなら、よく噛むこと、いろいろな食感の食事をすること、また、会話をすること、歌うこと、そして笑顔になること。楽しいと感じることを続ける事は、口から始まり全身にもよい効果が期待できます。
 笑う門には福来るの幸多き1年になりますよう、地域の皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

当院は今後さらなる医療の発展のため、ソフト面の整備の充実をはかり、
当院の設立の原点である「思いやりのあるやさしい医療」と「最新の高度医療」の実現に向けて努力を続けていきます。

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